「博報堂デザインのブランディング」永井一史

今年も年末になり、2019年を回顧すると色んなことがありました。その中でいつもかなりの刺激を与えてくれる仕事(人たち)があり(い)ます。本校の卒業生であるとか、企業に勤めている方々です。

生徒が行うキャリア教育を進めるにあたっては、事前にどのように進めていくのかをある企業の代表と共に構想し、その内容をまとめまで具体化する、そしてそれらを生徒が訪問する企業にコンテンツとしてお願いするようにしています。私は今現在中学校1年生の担当で、職場訪問は来年度なのですが、今年は卒業生講話、社会人講話をそれぞれ1学期、2学期に実施してきました。

今回の打ち合わせの中でも感じてきたことは、

・企業のatmosphereは教育において援用すべきところが多い!

・教育も変化を受け入れる体制をさらに構築しないといけないのでは?

・自社を高めていこうとする姿勢から学べることは?

ー最先端をいく企業はどのように事を進めているのか

ー企業の求める人材像を学校では育成できているか

ー育成のために中学校でできることは何か

ー生徒の発想を受け入れようとする土壌を用意しているか

ー教育はブランディングをどのように取り入れるべきか

ブランディング」という観点は教科の中でも協議をしています。教科として取り組むことをいかに確立させていくか、そのあり方には苦心しつつもその過程を楽しんでいます。その参考として「博報堂デザインのブランディング」を挙げます。

 

博報堂デザインのブランディング: 思考のデザインとカタチのデザイン
 

 

博報堂デザインのブランディング」永井一史

1.私のブランディング

ブランディングとは短期的な視点ではなく、将来までずっと残るもの、いわば未来の価値をデザインしていくことにほかならない。

 

ブランドとは企業や商品が持っている「らしさ」であり、独自性を持った価値だ。それを磨き上げ高めていくことによって、ブランドの名前を聞いたとき、誰もが頭に思い浮かべる共通のイメージがつくられていく。他とは違う明確な個性があるからこそ、人に選ばれ、愛される存在になる。

 

ブランドは「思い」がすべて

ブランドの価値ー「見える部分」「見えない部分」

ブランドの本質は、実は見えない部分にあるー見えない部分にある

:一番大切なもの〜「思い」

「思い」とは、ブランドの送り手が持つビジョン、魂、理念。こんなブランドでありたいという理想像。使う人に何をもたらしたいかという意思。言うなれば何よりも根本的で本質的な、「その企業や商品が社会に存在する理由」

ブランディング:そのブランドだけの「思い」を見つけ出し、それを具体的で目に見える「カタチ」にして世の中に届け、ブランドと人々の関係性をつくっていく行為

ブランドに一番大切なものは、「思い」

ブランディングとは、「思い」を「カタチ」にすること

 

ブランドは双方向の関係性

ブランディングは、送り手側の独善的な押しつけでは、受け手にとっての価値にはならない。どんなにいいものをつくったつもりでも、受け手が求めていないもの、その人の暮らしに必要がないものでは意味がない。

 

ブランディングは、ニュートラルに

デザイナーは送り手側の立場に身を置きながら、同時に受けて側の立場でも考える。送り手側だけにも属さないし、受け手側だけにも偏らない。一人の中に、二つの立場を持っているのがデザイナーなのだ。

 

ブランディングの二つのフェーズ

〜思考のデザインとカタチのデザイン〜

1)ブランドの「思い」を見つけ出して規定する「思考のデザイン」

2)思いを具体的なアウトプットにして世の中に届けていく「カタチのデザイン」

ーデザイン:目に見えるカタチの背景にある構想そのもの(なぜそういうカタチになるのかという理由)を考えること

「思考のデザイン」:双方向の関係性の中からブランドの「思い」を導き出し、価値として規定するまでの道筋

ー思考のデザイン=【インプット】と【プランニング】

ーカタチのデザイン=【アウトプット】

 

2.思考のデザイン

あらゆる情報をインプットする

ー最初の時点で、どれだけ視野を広げてブランドに関する多くのことを知ることができるかが、ブランディングの成否を決める。

ー立体的にブランドの全体像を掴んでいく方法

1)歴史 2)機能 3)文化 4)社会 5)関係

 

思いを「点」で規定する

ー思考のデザインは、ブランドの「思い」を見つけていくプロセスだ。これだという「思い」を見つけ出すことができたら、最終的には、誰もが共有できるように言語化して規定する。いわゆるブランドコンセプトと考えてもらってもいいが、重要なのは「点」で規定する意識だ。

 なぜ「点」という言い方をするかというと、規定した価値の“精度”がブランドの求心力に大きく影響するからだ。芯を捉えていないと、単なるお題目になってしまう。

 …その一点は「歴史」「機能」「文化」「社会」「関係」の関係性を積み重ねた総和が最大化された点でもある。

 

3.カタチのデザイン

伝えるにはジャンプが必要

ー思考をカタチに転換していく上で気をつけたいのは、「正しいだけでは人の気持ちは動かない」ということだ。

ー概念である思考のデザインと、

実際に世の中に生み出され存在していくカタチとの間には、どうしてもロジックだけでは埋まらないギャップがある。そのギャップを飛び越えていけるのはクリエイションの力だ。「このブランドが世の中と接したときに、人がどういう気持ちになるか、社会がどんな反応をするか」「どんなカタチであれば、人の気持ちは動くのか」、いろいろな生活者をイメージし、可能な限り想像を広げてみる。

 価値規定をそのままトレースするのではなく、スプリングボードにしてジャンプアップしていく。そのジャンプアップがあって、はじめてブランドの思いに命が吹き込まれ、うけてにとっての価値となって伝わっていくのだと思う。

ー五年、十年の耐用年数で考える

 最初に正しい場所に植えられた種は、自然の諸条件の中で、自力で真っすぐ立ち上がり、年月を経て、人や動物に憩いをもたらす大樹に育っていくだろう。

 「今」だけではなく、「未来」の姿を想像し、カタチにしていく。

 

教育にも援用可能な「ブランディング」について今よりもさらに深めていきながら、カリキュラムデザインができたらと思います。最近カリキュラムマネジメントってよく聞くんだけど、それってデザインがしっかりできてからの話じゃないかって思うんだけどね。