この濃霧の中での模索

3月から学校に生徒が登校しなくなり(所々ワンショットはあったものの)、もうすぐ2ヶ月になろうとしている。

もうここまでくると最後の授業が遠い昔のことのようで、これから学校が再開した時にどうなるか、かなり不安がある。

そうこう言っていると、さらに5月末日まで再開延長という自治体も出てきていることから、コロナの渦中にある地域にいる者としては、ま、きっと同じように、そうなるんだろうな、と思っている。これまでも再開を見越して学年の準備をしてきているものの、それが幾度となく実行されないとなると、生徒・保護者もそして私たち自身も混乱、不安、焦燥、・・・何とも筆舌に尽くし難い状態であることは間違いないよね。

 

この時期に私が英語教育研究として取り組んでいること

1)学校としても方向性を検討している(英語学習の)オンライン学習のあり方について

2)実践研究としての構想とデータ収集について

 

1)については、ただ単にオンライン上で指示を出したり、課題を提示したりといったことではなく、生徒の「英語スキルを伸ばす」ためのオンライン実践をどのように行うか、ということについて。

しかしその実践のための制約は多くある。

zoomを使った形態で行うことがオンライン実践で果たして本当に効果的なのか、chatで生徒をオンライン上に集めて何ができるのか、定かではないことが多い。

そもそもそのためのアカウントや生徒の環境などについても課題は解消してない。

聞いておけば、見ておけばいいのであれば、それはそれなりにテクノロジーを使えばいいのかもしれないが、

英語科としての技能を育成するために現在使えるテクノロジーをどのように使うか、という視点で考えなければ、

ただ単にオンラインで何かをした、というだけに留まってしまいかねないよね。

 

今考えているのはオンラインを使った自己調整学習の実施ができれば。

ある程度は私が教科書内容について話をする時間はとるが、

生徒に考えさせる余地をしっかり残して課題を提出してもらう、という流れにしたい。単語の発音や文におけるassimilationなども押さえながら、繰り返し音読などのpracticeをさせる時間をとる。ただ音読についての評価をどのようにするか、ということについてはまだ見えていない。

近いうちにオンライン模擬授業をやるので、そこで課題がさらに見えるはず。

 

2)についてはこの期間かなりのSLA論文を読み、そしてISLAの観点からリフレーミングしてきた。

DeKeyser, Skehanあたりの考えはまだまだ浸透していないし、彼らの主張するcognitiveな側面から捉えるpractice, skill acquisitionの概念は私の研究、実践において核となりうる。

学習指導要領などに書かれている目標を達成していくのに、practice, skill acquisitionの観点からはかなりのことが説明できると思う。

Individual Differencesについてもかなりの発見があったし、その中でも特にlanguage aptitudeの知見とpractice, skill acquisitionについても概観することができた。

これらの領域は海外では広く進められているものの、日本人を対象としたSLA researchは少ない。中学生を対象としたものなどほぼない。この領域を専門としている研究者とコンタクトが取れているので、さらに今後協力をお願いしたいと思っている。

上野千鶴子「情報生産者になる」はかなり有益だった。これは研究者じゃなくても読むべきだと思う。

情報生産者になる (ちくま新書)

情報生産者になる (ちくま新書)

 

 

昨年から今年にかけて教育哲学の領域にかなり傾倒していたが、その時期を経て、再度SLA分野に戻ってきた今日この頃。教育哲学の見地から自分の領域を捉える経験はかなり良かった。ウィトゲンシュタインに関する解説意見書はマジで面白かったな。

 

言葉の魂の哲学 (講談社選書メチエ)

言葉の魂の哲学 (講談社選書メチエ)

  • 作者:古田 徹也
  • 発売日: 2018/04/10
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

 

古田先生の著書はこれから私自身がさらに勉強をして深めていきたい。それらを真に理解する力はまだない。

自分自身の英語力を伸ばしていくためには何をすべきか、きっかけを掴むことができた。やはり鍵は語彙力とCAFの育成だと思う。vocab studyとin/outputをしばらくやり続けていたらきっと変化がある。

 

近日中にこれからどのようにするのかを決定する会議に出るが、6月再開か、9月になるのか、色々と考えて意見は言おうと思う。今できることは準備と力量を上げておくこと。ただ、上げた力量で生徒にいきなり難しいことを問うというのは見当違い。生徒の実情に応じて適切な課題を提示できる、痒いところに手が届く実践を構築することだね。